昨今、温暖化の影響と思われる異常気象に肥料の高騰などで農家の方々は大きな打撃をうけており、先の見えないコロナや世界情勢に不安な日々を過ごしておられると思います。私の圃場でも高騰する肥料代に施肥設計の変更を余儀なくされ、いろいろ見直しを進めているところであります。
今回、この記事を書こうと思った主なきっかけは、ネギ栽培について記された文献があまりに少なく、私も自身の経験した失敗なども踏まえてこれからの時代に即した栽培技術をご紹介したいと思ったからです。
その1 肥料は量よりバランスが大事
ちなみに筆者はネギ栽培を始めて5年目になり、始めたばかりの頃とはだいぶ施肥の内容が変わってきた。 窒素、燐酸、カリの化成肥料を極力減らし(この肥料が高騰している)有機主体の肥料にミネラル肥料を一緒に与えてみたところ、かなりの収量がとれたのでそのあたりから話していこうと思う。
栽培において最も重要な要素は気温である。適期適作と言う言葉通り、作物の育ちやすい気温で栽培させる事がまず重要で、少々肥料設計が違っても気温が作物にあっていれば経験上、失敗は少ないと思われる。
作物が必要としている養分は酵素
酵素‥それは微生物が生み出す養分である。発酵などもその産物であり、作物がもっとも欲する栄養素でもあります。この酵素を利用する事によって作物の根の細根を出させる事ができ、地中のミネラル分を効率的に吸わせる事が可能となります。私の圃場では苗が活着した頃に酵素+ミネラル液肥を土壌灌注しています。この方法はあらゆる生育ステージに対応し、私の経験では一番効果が高い施肥の方法なので是非オススメしたい。
リン酸は養分を運んでくれる作物の血液である
ネギ栽培においてリン酸は非常に重要な役割がある。それはカリウムやマグネシウム カルシウムなどの作物体内の移動を手伝う事である。そして、肥料として与える場合、亜リン酸の形となった物を選ぶと良い。土壌に吸着されにくく作物にダイレクトに効くので効果が高い。
カルシウムは作物内での移動と再利用が難しいので液肥でまめに与えると良い。
そして、意外と欠乏する事が多い栄養素としてカルシウムが挙げられる。元肥で十分に苦土石灰を投入していても欠乏症として症状が出る場合もある。
その原因として、多く場合、作物が吸着しにくい形態の硫酸カルシウムもしくは炭酸カルシウムとして畑に投入されるからである。カルシウムは水に溶けないと作物が吸収する事ができない。そして硫酸カルシウムも炭酸カルシウムも水に溶けにくい性質を持つ。なので作物に与える場合、液肥での葉面散布をオススメしている。カルシウムは作物内でも移動が難しく、直接、成長点に散布する事が最も効果が高い方法となる。できれば週に一回は葉面散布でカルシウムを与えると良い。カルシウムを十分与えている場合、野菜も丈夫になり病気にもなりにくく生育も旺盛になる。私がオススメしているカルシウム資材もリンクを貼っておくので是非確認しておいてほしい。
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カリウムは夏には積極的に入れておきたい肥料ではあるが‥
ネギ栽培においてカリウムは重要な役割があり、主に夏の水分調節や根の生育に使われる。私は追肥で使う場合、塩化カリウムを水で溶かして土壌灌注を行うが、液肥を薄めて灌水するのも良い。そして注意をして欲しい事が、カリウム マグネシウム カルシウムの3つの栄養素は拮抗作用があり、それぞれ吸収を抑制しあうのでローテーションで与えるとよい。
例として、通常時はカリウム 曇りの日はカルシウム 晴れで生育をさせたい時はマグネシウムというような具合である。
その2 夏の栽培は地力窒素を上手に利用してみる。
筆者が畑作を始めてまもない頃、近所の農家の方に「夏は窒素は入れんでえい」と教えられた。その理由は夏に気温が上がってくると微生物が盛んに畑の堆肥などを分解し、窒素を発生させてくれるからという事だった。しっかり堆肥を入れている畑であれば、夏は窒素を少な目にして微生物資材などを取り入れてみるのもいいかも知れない。
もし、窒素を投入する場合でも作物が吸収しきれず余った窒素分は病気や害虫などの原因となる為、生育に合わせた施肥を行うとよい。
その3 光合成を行うためには多量のミネラルと鉄分が必要。
結局のところ、作物が大きくなるには盛んに光合成を行う必要がある。そして、光合成を盛んに行うようにする肥料というものも存在する。
筆者が考える積極的に与えたい肥料は鉄分である。中でも作物が吸収しやすい二価鉄を与えるとよい。鉄分というものは作物にとって、葉緑素の元となるもので、成長期に欠乏すれば収量にもかなり影響する。その他、マンガン ホウ素 銅 亜鉛なども欠乏しないように気をつける必要がある。その為にオススメしたい液肥が鉄力トレプラスである。週に1回ほど水やりを行う際、少量を与えるだけで作物が元気になる。やはり、施肥はバランスが重要で特に微量要素にも気を配る事が大事だとつくづく感じる。
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その4 水やりは湿潤と乾燥を意識してみる。
作物は水を求めて根を張る。水が近くになければ地下水を求めてさらに深く根を張ろうとするが、いつも十分に水分があればそれ以上根を深く張ろうとしなくなり、表面のごく浅い部分にしか根域がなくなる為、必然と大きさも小さくなる。土を握った時にしっとり感じるくらいな水分があれば十分なので、しっかり灌水した後は乾燥させる事を意識してみると作物もよく養分を吸収するようになる。
その5 特に指定がない場合、消毒は雨の前に。殺虫剤は雨の後がよい。
畑作物である以上、病気や害虫の被害は必ずあるので、消毒を行う場合もある。夏の高温多湿での病気は避けることは極めて難しいので消毒をする場合、特に薬品に記述がなければ雨の前に行うとよいだろう。最近の消毒薬は殺菌を行った後に葉の表面に薄い膜を張って雨をやり過ごすタイプなどもある。逆に殺虫剤は雨で流れたら効果が薄れるので雨の後に行うとよいだろう。
混用については作業量を減らせるメリットはあるがどちらの薬液も効果が薄れるので別々での施工をオススメする。もし混用する場合、薬剤の相性もあり混用できないものもあるので、必ず確認をして使用する。
そして、ネギに薬剤を使用する場合、展着剤を一緒に使用する。葉が厚く、水を弾くので展着剤を使用した方が効果が高い。薬剤も展着剤も必ず登録を確認して使用する。
まとめ
以上がネギ栽培を行う際、覚えておきたい豆知識でした。もちろん、ここに書いた事が全てではなく、基本的な施肥や管理は必要ではあるのでもう一歩踏み込んだ栽培を試みる方にとって有益な情報になれば嬉しい限りである。ここにリンクを貼ってある資材は私も使っているものばかりなので是非取り入れてみてください。では。
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